眠っている間、私たちに何が起きている? — 第3回 / 全5回
知らない街なのに自宅だと思い、昔の友人と最近の同僚が一緒に現れ、場面が突然切り替わる。目が覚めればおかしいと分かるのに、夢の中では当然のように受け入れていることがあります。
夢を「記憶を整理している映像」と一言で説明したくなりますが、その目的や仕組みは、まだ一つの答えに決まっていません。第三回では、眠っている脳の活動について分かっていることと、夢の内容や役割について残る問いを分けて読みます。
眠っている脳は、止まっているわけではない
睡眠中も、脳は活動しています。睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠があり、脳波、眼球運動、筋肉の状態などによって分類されます。一晩の間に複数の段階を行き来し、すべての時間を同じ状態で過ごしているわけではありません。
鮮明な夢はレム睡眠と関連することが多い一方、夢の報告はノンレム睡眠から起こした場合にも得られます。「夢を見るのはレム睡眠だけ」という説明は単純化しすぎです。
また、夢を覚えていないことは、その夜に夢が一度もなかった証拠にはなりません。体験したことと、目が覚めた後に報告できることの間には、記憶という別の過程が入っています。
夢を研究するには、どうやって確かめる?

脳の活動や目の動きを測ることと、夢の内容を知ることは同じではありません。研究では、眠っている人を特定の時点で起こし、直前にどんな体験があったかを聞く方法などを使います。
本人の報告を使う以上、忘れてしまった部分や、言葉にする際の整理が入り得ます。だからといって研究できないわけではありません。測定条件をそろえ、複数の人や時点を比較することで、どの状態でどんな報告が出やすいかを調べます。
夢をそのまま動画ファイルとして取り出して、細部まで再生しているわけではない。この制約を知ると、夢の研究の見出しを読むときにも、実際に何を測ったのかを確認しやすくなります。
奇妙なつながりが生まれる理由を考える
夢には、最近の出来事や過去の記憶に似た断片が現れることがあります。ただし、そのままの録画再生ではなく、人物や場所が組み替わり、現実とは違う展開になることがあります。
睡眠中には、外界からの情報の受け取り方や、脳の領域同士の活動の関係が覚醒時と変わります。感情を伴う体験が強く現れる一方で、その場面の矛盾を検討する働き方が普段と異なることなどが、奇妙さを考える手がかりになります。
しかし、「この部位が弱くなるから、すべての夢が変になる」と一対一に決めることはできません。夢には日常的で筋の通ったものもあり、自分が夢を見ていると気づく体験もあります。夢という一語の中にも幅があります。
夢には、何の役割がある?

記憶、感情、将来の状況への備えなど、夢の役割を説明する考え方はいくつもあります。ただし、睡眠が記憶へ関わることと、夢の映像そのものがその作業を担うことは、同じ主張ではありません。
ある作業中に映像が生じたとしても、その映像が作業の原因なのか、結果なのか、並行して起きる現象なのかを区別する必要があります。関係があることから、役割が一つに決まったとは言えません。
「夢は意味がない」と断定するのも、「すべての夢に決まったメッセージがある」と断定するのも、現在の知識を越えます。研究が進んでいるからこそ、何がまだ分からないかを具体的に言えるようになっています。
夢の内容を、診断の暗号にしない
歯が抜ける夢、追いかけられる夢などに、誰にでも同じ意味があるとする解釈を見かけます。しかし、特定の夢の内容だけから、人の心理状態や未来を確実に読み取れるわけではありません。
自分の体験を振り返り、最近気になっていたことと結びつけて考えることはできます。ただし、それは本人の意味づけであり、科学的に検証された一対一の対応表とは別です。
夢の内容に驚いたときも、「こんな夢を見た自分は、必ずこういう人間だ」と決めつける必要はありません。夢の体験と、覚醒時の意図や価値観を、そのまま同一視しない方がよいでしょう。
資料を読む|夢の目的は未確定
NINDSの睡眠解説は、夢の正確な目的はまだ分かっていないこと、夢は複数の睡眠段階で起こり得ることを示しています。NHLBIの資料は、睡眠段階を分ける測定の手がかりを説明しています。
ここでは「脳活動を測る」「夢の体験を報告する」「役割を推測する」を図の三つの欄に分けました。最初の二つから得た情報を使って、三つ目の仮説を検討します。すべてを同じ確かさの事実として並べないことが、このテーマでは特に大切です。
覚えている夢から、問いを一つ残す
自然に目が覚めたとき、印象に残った夢を短く書くと、「出来事の筋」と「そのとき感じたこと」が違っていると気づく場合があります。細部を無理に思い出そうとすると、後から補ってしまう可能性もあるので、確かな部分と曖昧な部分を分けます。
記録のために睡眠を分断したり、毎回目覚ましで起きたりする必要はありません。この連載は夢を多く見る訓練ではなく、普段の体験に疑問を持つためのものです。
夢の目的が未解明でも、睡眠と記憶の関係については多くの研究があります。次回は、その違いを踏まえて、眠っている間に学んだことがどう変わり得るのかを見ていきます。
参考資料
資料確認:2026年10月26日。本文の資料紹介は、明記した場合を除き当サイトによる要約・説明です。
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