中級コース|第9回/全10回
一社ずつ調べて、よさそうな会社を五社選びました。これで投資全体もよい組み合わせになったでしょうか。個々の会社を理解することと、全体の偏りを理解することは別の作業です。同じ条件で五社とも困るなら、銘柄数が増えても、その条件への依存は強いままです。
この回では、新しい銘柄を探す前に、今持つものを横に並べて見ます。複雑な統計モデルから始めず、業種、顧客、地域、為替、資金の期限という言葉で共通点を探します。
一社の説明を、全体の表へ移す
各社の主な事業と、利益に影響する条件を一行にします。例えば、住宅関連、住宅設備、住宅向け資材という三社は、名前が違っても住宅需要の変化を共有する可能性があります。別の業種分類に入っていても、顧客が共通なら影響が重なることがあります。
為替についても、輸出企業だから円安で必ず利益が増えると単純には言えません。海外生産、輸入原材料、価格転嫁、為替予約などによって影響が変わります。会社が公表した説明を手掛かりにし、分からない場合は未確認とします。
ここで作る表は、将来の値動きを断定するものではありません。「同じニュースで影響を受けそうな部分」を見つけ、次の確認先を絞るためのものです。
| 値動きで配分が変わる例 | A | B | Aの割合 |
|---|---|---|---|
| 当初 | 50万円 | 50万円 | 50% |
| Aだけ2倍 | 100万円 | 50万円 | 約66.7% |
保有金額の比率で見ると、印象が変わる
五社を持っていても、一社に資金の80%を投じていれば、その一社の影響が大きくなります。銘柄数だけでなく、時価でどのくらいの比率になっているかを確認します。買ったときの金額と現在の金額は分けておきます。
最初にA社50万円、B社50万円で持ち、A社だけ100万円になった場合、全体150万円のうちA社は約66.7%です。買い増していなくても偏りは変わります。値上がりがうれしいことと、全体の影響が集中することは同時に起こり得ます。
比率が変わったから必ず売るという話ではありません。最初の目的に合うか、下落したときの金額が生活にどう響くかを見直します。配分を調整する場合には、費用や税、口座の条件も考えます。
当サイト制作。数字の定義と事業の説明を行き来して確認します。
投資信託を足したときも、中身を確認する
個別株に加えて投資信託を買うと、一見広く分かれたように見えます。しかし、その投資信託が同じ銘柄を多く保有していれば、間接的な持分が重なります。二つの投資信託同士でも、上位の組入銘柄がほぼ同じ場合があります。
商品数を数えるだけでなく、運用対象や上位銘柄、地域・業種の比率を読みます。完全に重なりをなくす必要があるという意味ではありません。重なっていることを知らずに、別々のリスクだと思い込まないためです。
例えば、同じ株式指数を追う二本の投資信託は、運用会社が違っても市場への投資対象は似ています。管理するサービスが違うことと、投資対象の値動きが違うことを分けて理解します。
聞き手ここが気になる
銘柄を十社持っていれば、十分に分散できていますか?
案内役一緒に整理しよう
社数だけでは分かりません。同じ顧客や業界に依存していると、一緒に悪化することがあります。投資信託の組入れと重なっていないかも確認します。
一つの出来事を置いて、影響の向きを考える
「原材料の価格が大きく上がったら」「主要市場の需要が落ちたら」と、一つの条件を置きます。各社にとって負担になりそうか、販売価格へ反映できるか、ほかの事業が支えるかを調べます。影響額まで分からなくても、同じ向きに偏る会社を見つけられます。
ただし、実際の株価は事業への影響だけで動くわけではありません。市場が何をすでに予想していたか、金利や資金の動きなども関係します。ここでの表を、そのまま上がる・下がる銘柄の予言にしないようにします。
違う資産を組み合わせても、危機的な局面で一緒に値下がりする場合があります。過去の値動きの関係が将来も固定されるとは限らないことを踏まえ、分散を保証として扱わないことが大切です。
投資以外の家計も、同じ出来事に影響される
勤務先の業界と保有銘柄が近い場合、景気の変化で収入と資産の両方が影響を受ける可能性があります。投資口座の中だけを見て分散したつもりでも、家計全体では一つの条件に偏っているかもしれません。
住宅ローンや今後の大きな支出も、資金の使い方を考える材料です。これは家計を一律の配分へ当てはめる話ではありません。自分がどこから収入を得て、いつ支払いが必要かを、保有資産と別々にせず見るということです。
必要な時期の近い資金まで市場へ入れると、相場の都合で売る時期を待てなくなる場合があります。初級で作った資金の役割のメモへ戻り、生活の予定が変わっていないかも確かめます。
家計の外側にあるようで、収入と同じ方向へ動くこともある
勤務先と同じ業界の株を多く持つと、業界全体が悪化したときに、給与や賞与の不安と保有資産の下落が重なる可能性があります。よく知る業界であることは理解の助けになりますが、それだけで家計全体の偏りが小さくなるわけではありません。
この見方は、外国資産や投資信託を足す場面にも使えます。商品名が違っても、同じ大型企業を上位に組み入れていれば一部が重なります。一方、重なりがあること自体を失敗と決める必要もありません。どの程度の偏りを意図して持っているのか、知らずに増えていないかを確かめます。
見直す頻度にもバランスが必要です。毎日の小さな値動きに合わせて売買すると、手間や費用が増えます。定期的な確認日や、目的・生活条件が変わったときなど、自分が判断を見直すきっかけを決めておきます。特定の配分や頻度が全員に最適という話ではなく、気分だけで変えないための準備です。
確認問題:違う五社なら安心?
五社の株を均等に持っています。しかし五社とも、売上の大半が同じ一社の大口顧客に依存しています。会社名が五つあることで、その顧客の発注減少への備えは十分になったでしょうか。
十分とは判断できません。共通の顧客への依存があるため、同じ出来事が五社へ影響する可能性があります。代替顧客や契約条件などを調べ、全体で何に依存しているかを記録します。銘柄の数と、影響要因の数は同じではありません。
最後に、保有比率、共通する要因、未確認の点、次に見直す時期を書きます。次の最終回では、ここまで学んだ企業分析を一枚のノートへまとめます。
参照した資料と、この回の例について
SEC Investor.gov「資産配分」(参照内容の要約)
価格変動によって配分がずれること、複数の商品でも中身の分散を確認する必要がある点を参照しました。本文の二資産は独自の簡単な計算例です。
資料確認日:2026年10月27日。図解・練習問題・数値例は当サイト制作です。
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