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景気の波をまたいで企業を比べる。好況の利益を延ばさない【株の上級7】

季節のアーチの中の工場。景気の波を考えるイメージ 大人の株を学ぶ
季節のアーチの中の工場。景気の波を考えるイメージ
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上級コース|第7回/全10回

景気が良い年には利益が大きくなり、PERが低く見える会社があります。ところが、利益がピークに近いなら、その低い倍率だけで割安とは言えません。反対に不況で利益が落ちた年の高いPERだけを見て、割高と決めるのも早計です。

この回は、今の数字が波のどこにあるかを考える練習です。景気の転換点を正確に当てる方法ではありません。好況も不況も含めて、事業がどんな条件で利益と資金を生むかを整理します。

株価が同じでも、利益の波で倍率が動く

株価1,000円の会社で、一株利益が好況時200円ならPER5倍、通常時100円なら10倍、不況時20円なら50倍です。同じ株価でも、使う利益によって印象が大きく変わります。PERの低さが、将来の利益低下を織り込んでいる可能性もあります。

だからといって通常時の利益100が正解と決まるわけではありません。何を通常とみなすか、その会社の規模や競争環境が変わっていないかを調べる必要があります。便利な平均値ほど、仮定を隠さないようにします。

株価1,000円の仮定一株利益PER
好況200円5倍
中間100円10倍
不況20円50倍
当サイトの架空例・学習用整理。実在企業の評価額や推奨条件ではありません。

過去の平均が、そのまま今の会社を表すとは限らない

過去五年の利益の平均を使うと、単年の大きな変動をならせます。しかし、その五年が好況ばかりなら波を十分に含みません。会社が買収で二倍の規模になった場合も、昔の利益額を平均するだけでは現在の事業を捉えにくくなります。

利益率を平均し、現在の売上規模へ当てはめる方法もあります。ただし商品構成や工場の効率、価格競争が変わっていれば、過去の利益率が再現する保証はありません。平均する期間と、その期間を選んだ理由を記録します。

単純な例で、売上が昔の500から現在1,000へ増えているなら、過去の利益額50だけを見るより、当時の利益率10%が今も成り立つかを問う方が筋道は見えます。しかし現在も10%と置くには、その根拠が別に必要です。規模の補正と、収益性の確認は別の作業です。

検証の手順
01周期価格・数量・費用の波を探す。
02規模昔と今で事業の大きさをそろえる。
03途中回復までの時間と資金を考える。

当サイト制作。計算結果だけでなく、前提と未確認の点を残します。

価格、数量、費用のどこが波を作るのか

素材を売る会社なら販売価格、設備を売る会社なら顧客の投資意欲、輸送会社なら需要と運賃など、波の入口は異なります。同じ景気敏感という言葉でまとめず、何が変わると売上や利益が動くかを確認します。

固定費が大きい事業では、稼働率が落ちたときに利益が大きく減ることがあります。逆に需給が締まると、価格と数量の両方が有利に働く場合があります。好況時の高い利益率を長く続ける予想には、競合の増産や顧客の需要減少も考える必要があります。

原材料価格の変化が販売価格へ転嫁されるまでに時間差があれば、一時的に利益が膨らんだり縮んだりします。在庫の評価や契約期間も関係します。市場価格のグラフと会社の利益が同じ時期に動くとは限らないため、会社の説明を読み合わせます。

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回復までの時間を飛ばさない

平常時の利益を推定しても、翌年すぐそこへ戻るとは限りません。赤字から三年かけて回復する会社と、翌年回復する会社では、その間の資金負担が違います。平常時の数字へ瞬間的に置き換えると、回復までの費用や時間を見落とします。

ノートには回復した姿だけでなく、途中の売上、利益、設備投資、返済を簡単に並べます。需要が戻る前に返済期限が来るなら、追加資金が必要かもしれません。最終的に良い会社へ戻るという予想と、そこまで資金が持つという条件を分けて確認します。

聞き手ここが気になる

過去の平均利益を使えば、波の問題は解決ですか?

案内役一緒に整理しよう

平均した期間と会社の変化を確認します。回復に時間がかかる場合、来年すぐ平均へ戻る仮定にも注意が必要です。

景気の波と、構造的な変化を区別する

需要が一時的に減ったのか、別の技術や商品へ置き換わったのかでは、回復を考える前提が違います。過去に戻った経験があるから今回も戻る、と決めつけないようにします。顧客の行動、代替品、設備の競争力、規制などを確認します。

一方で、新しい技術が出たというニュースだけで既存需要がすぐ消えるとも限りません。どの用途で、どの速度で、価格や性能の条件が変わるのかを見ます。循環か構造変化かを一言で断定するより、両方の可能性を残して確認指標を置くことができます。

同じ業界でも、波への耐え方は違う

二社が同じ商品を売っていても、固定費、借入れ、販売契約、顧客構成によって不況時の負担は異なります。好況時に利益率が高かった会社が、不況でも余裕を持つとは限りません。売上が減る場合の費用の下がり方と、返済の予定を合わせて見ます。

長期契約が価格の変動を和らげる場合もあれば、価格上昇時の利益拡大を遅らせる場合もあります。契約があることを一律に良い材料とせず、期間、更新、価格改定の条件を確認します。分からない条件は、同業他社の説明から勝手に埋めないようにします。

比較表には好況の最高利益だけでなく、不況時の資金流出、借入れの増加、増資の有無なども並べられます。過去を生き残ったことは将来の保証ではありませんが、会社が波の中でどんな選択をしてきたかを理解する材料になります。

確認問題:過去最高益でPER5倍

会社が過去最高益となり、PERは5倍です。これだけで割安と言えない理由を三つ挙げてみましょう。利益が波の頂点に近い可能性、一時的な利益が含まれる可能性、今後の投資や費用増加がある可能性などが考えられます。

次に調べるのは、過去の一周期の利益率、需要と供給の変化、設備投資計画、返済期限です。調べた結果、低い倍率に理由がある場合も、過度な悲観だと考える場合もあり得ます。結論より先に、結論が依存する条件を見えるようにしましょう。

この回の最後には、好況・中間・不況の三つの状態で、数量、価格、利益率、資金を一行ずつ書いてみます。次の回は、こうして作った自分の見方へ、あえて反対の材料を当てる練習です。

参照した資料と、この回の例について

Aswath Damodaran「More on normalizing earnings」(参照内容の要約)

規模の変化と、平常時へ戻るまでの時間を考慮する必要がある点を参照しました。本文の三状態やPERは独自の架空例です。

資料を確認する ↗

資料確認日:2026年10月27日。計算・図解・確認問題は当サイト制作です。

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